工務とは?辞書で調べても分からない工務の実態について現役工務が解説。

まめ兄
「工務」の仕事内容っていったいなんなんだろう?
辞書で知らべても、人に聞いてもイマイチはっきりしたことが分からないなあ。

この記事では、「工務」という職業についての説明を、現役の「工務」が一般的な解釈と現場の実態を踏まえて分かりやすく解説しています。

 

本記事のテーマ
この記事を読むと、工務の仕事内容が知りたい方、工務への転職を考えている方、工務を目指している方がリアルな工務の仕事内容を把握できるようになります。

【この記事の信頼性】
従業員約30人の工務店で唯一の工務として、住宅の一部リフォームからフルリノベーションまで全ての現場を管理・監督している立場の僕が解説をします。

読者さんへの前置きメッセージ

本記事では、「工務という職業に興味があるけど調べてみてもよく分からない」もしくは「これから建築業界を目指そうと考えているけど工務のリアルな仕事内容を知りたい」という方向けに書いています。
この記事を読むことで、工務のリアルな仕事内容が理解できるようになると思います。

 


工事の種類

便利屋, 建設現場, 労働者, 力, 文字, 楽しい, Diy, 工事, 仕事, 構築する, 建設労働者

ぼくが働いている工務店は、戸建て住宅や分譲マンションのリフォーム工事をメインとしています。
行っている工事の種類は、

・クロス(壁紙)張替え
・床張替え
・建具(ドアのこと)取り換え ※建具→たてぐ
・間取り変更
・システムキッチン導入
・システムバス導入
・トイレ付け替え
・エアコン脱着

・配管工事(キッチン、風呂、トイレ等)
・電気配線工事
・左官工事
・畳取り換え、修理
・網戸取り換え、張替え
・屋根工事
・屋根外壁塗装工事 etc…

要は住宅関係のリフォームのこと全般は取り扱っているので、工務の仕事内容に関しては網羅していると思います。
ちなみに「工務」を辞書で引くと、

1,土木や建築に関する仕事。
2, 工場などに関する事務。 出典:goo国語辞書

と、国語辞書的・世間一般的には工事作業をする人も、工務店で事務仕事をしている人もまとめて「工務」と呼んでいるようですね。
このように「工務」の仕事は辞書で調べてもかなりざっくりとしか解説されていないばかりか、工務は現在かなりの人手不足ということもあり多くの建築会社では、仕事のできる工務を簡単には手放さないので、そもそも「工務」の情報が市場に出回りにくい構造になっているんですね。

 

 

ちなみに、一般的に建築系の仕事の人が指す工務とは、「工事現場の管理・監督をする人」のことを指します。
管理・監督とはつまりどういうことをするのかを次にまとめていますのでご覧ください。

工務の仕事内容

建築家, 人, 予定, 工事, 保護ヘルメット, エンジニアリング, 真剣に, チーム, 茶色のチーム

職業を工務と答えると、
「あー!学校とかで草抜きをしたり環境を整えてくれる人ねー!」
なんて言われることがしばしばありますが、それは用務員さんです(笑)
用務員さんは元公務員等の方で定年を迎え再就職先として学校の用務員という職に就き、小学校等の草むしりをしてくれたり環境を整えたりしてくれている方のことですね。

前述したとおり工務の仕事内容は、工事現場の管理・監督を行うことですが、要は工事をスムーズに進めるために必要なこと全てになります。

・工程管理(フルリノベーションになると工事の順番が重要になります。デフォルトの工程があれば大丈夫だと思いますが、分からなければ職人さんに相談するのが良いです。)
・予算管理(粗利を何%確保するかです。例えば10万円の工事で30%粗利が欲しければ10万×30%=3万なので工事費は7万円で抑えなくではなりません。)
・工事部材の発注、搬入(キッチンやユニットバス等大きなものを一度に全部現場に搬入していては職人さんの作業の邪魔になるので部材は適宜現場に搬入してもらうようメーカーに連絡をします。現場が広くて部材を置く十分なスペースがある時や、職人さんによっては最初から全部入れてOKな場合もありますが、その場合も職人さんに一言「余ってるスペースの所に全部入れても大丈夫ですかね?」みたいな感じで声をかけた方が良いでしょう。)
・職人の手配(職人さんは言葉遣いが乱暴な人もいるけどそういう人に限って基本いい人達が多いです。)
・関係機関への連絡(マンションの管理組合、メーカー、建材屋、不動産会社etc…)
・工事内容、商品に応じた職人との打ち合わせ(ここでは専門用語がたくさん出てくるので、その都度聞くかググるかして覚えていけばOK。分からないことは積極的に質問していれば職人さんにもいい印象を持たれます。)
・自分ができる範囲での工事(工事が必要だけど職人を手配する程でもない工事がどうしても出てきます。例:ネジを締めるだけ、ちょっとペンキを塗るだけ等)

以上がおおまかな工務の仕事内容になります。
文字にすると何だか難しそうな感じはしますが、要は工事のスケジュールを組んでそれ通りに部材と職人さんを手配して工事を終わらせることが目的なのでそれが理解できてればOKです。

工務のとある一日の動き

8:30~9:30 現場① 現場確認&部材搬入&職人さんと工事の打合せ(がっつり会議的な感じじゃなくて職人さんも作業しながら「ここの棚は床から900mmの高さでお願いしますねー」「床から900ね!了解です!あ、そういえばあそこの部材っていつ入るの?」みたいな感じ。

(移動)

10:00~11:30 現場② 現場調査(現場調査とは、工事現場の寸法や商品との兼ね合い、お施主さん(おせしゅさん=お客さん)の思いを、職人や業者が実際に現地で確認することで工事が可能か不可能か、課題があるかないか、もしくは更に良い方法が無いかを確認する大切な工程です)

(移動) 移動中は職人さんやメーカーさんとの情報共有について電話やメールをしたり、スケジュールを考えたりすることが多いですが、これは人それぞれですかね。

12:00~13:00 昼休憩(正直がっつり昼休憩はなかなか難しいかもしれません。ぼくは10分くらいで弁当を食べて後は普通に仕事をしています。)

13:00~15:00 現場③ 現場確認&部材搬入&職人さんと打ち合わせ(こまめに現場に顔を出すことが大切です。初心者で分からないことだらけでもとりあえず現場に顔さえ出していれば、素人なりに微妙な計画との違いに気づいたり、職人さんから工事のことを教えてもらえたり、「あの部材もう入れてもらっていいよ!あと追加でこれも入れといて!」など職人さんからヒントが貰えます。)

(移動)

15:30~17:00 現場④ 職人さんの手伝い(職人さんはだいたい自分一人で仕事を片付けてしまいますが、どうしても猫の手も借りたいような状況がたまにあります。反対に工務も職人さんに助けてもらうことはたくさんあります。持ちつ持たれつなのでできるだけ協力した方が良い信頼関係が築けます。

17:00~18:00 メールチェック、工程の確認、図面の確認、明日の準備(朝イチで着工立会や配達があればその準備をしておいた方が少しでも朝家でゆっくりできますw)

ざっくりこんな感じで、とにかく最初は動きながら足りてないことが無いか探すといった感じになると思います。
工事内容が全て決定して着工(ちゃっこう=工事が始まること)するのであれば、計画的に動けばそれほど難しくはないはずです。

ただし、工事内容が曖昧なまま工事が着工し「この部分は考えときますー。いついつまでには決めますのでー」のような場合は要注意です。
その場合は、とにかくお施主さんとの窓口の担当者(営業なら営業)に口酸っぱく結論をいつ出すか発破をかけなければなりません。

工事内容が追加される場合、窓口担当者(営業)はお施主さん(お客さん)の希望を工務に伝えるだけですが、
工期の途中で工事内容の変更があった場合、工務にはどのような影響があるかというと

・窓口担当者から聞いた内容が可能かどうかを職人(場合によっては複数人)に確認(例えば、「天井付近にあるコンセントの位置を床の高さまで下げてほしい」と工期の途中で言われたとすると、①大工さん②電気屋さん③クロス屋さん の3社に少なくとも動いてもらわないといけません。3社のスケジュールが合わなかったり、他の工事の兼ね合いで工事を割り込むことが出来なければ詰みの可能性があります。)
・メーカーに部材があるかどうか確認し部材を発注(職人がいる間に納品が間に合うとは限らない。間に合わなければ詰みの可能性あり)
・予算オーバーの可能性(お施主さんとの契約はすでに交わしているので、追加の費用はこちらが持つことになります。工務は会社から粗利を何%以上確保しなさいと責任を負わされているので、追加工事が発生すると予算が削られていきます)
・計画していた工事が間に合わなくなる可能性

このように一か所工事内容が曖昧なだけでもかなりのリスクが潜んでいることが分かると思います。
工事内容があやふやで発注が遅れ、工期が間に合わなかった場合、
命令している人のイラスト「だってなかなか内容を決めてくれなかったのは、営業やお客さんじゃないかー!」

なんて言い訳をしても、工務の仕事は「自分が組んだスケジュール通りに工事を終わらせること」なので人のせいにしたところで人望を失うだけになります。
工事は計画通りにしか進まないので、あやふやな情報には念には念を入れて対応することが重要です。

工務になるには何をすればいいか?

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工務になるために必ずしも必要な資格等はありません。
資格が無くても工務になることは可能です。
転職サイト等でも「未経験歓迎」等の募集があることからも分かるように現在は、資格や経験が無くても需要がある業界といえます。

サラリーマンなら1級、2級建築士や施工管理の資格があれば転職に有利ですし、場合によっては、給料が上がる可能性もあります。
その道での独立を考えているのなら、建築士の資格を持っておいた方が工事の幅も広がりますし、会社のブランドにも箔が付くので独立を考えているのなら建築士の資格は持っておくに越したことはないでしょう。

工務の仕事は人に動いてもらうことが沢山あります。
工務に必要な条件は「素直さと誠実さ」だと考えています。
現場監督といっても、工事をしてくれる職人さんがいなくては着工すらできません。

「百聞は一見に如かず」という言葉があるように、いくら資格を持っていても現場のことを知らなければ工事指示はできませんし、
職人さんに認めてもらわなければ「あれをしろこれをしろ」と指示ばかりしても誰も付いて来てはくれなくなってしまいます。

最初は仕事がうまくできなくても、メーカーさんや職人さんに対して素直に誠実に接していれば、多少のミスもカバーしてくれますし、向こうから色々教えてくれるようになります。
イメージの通り、職人さんの多くは体育会系の現場で鍛えられてきた猛者たちばかりです。

そんな人たちが、突然現れた「現場監督」なる人物に「あれをしろこれをしろ」といった指示・命令をされたらどんな気持ちになるかは想像するのは難しくないはずです。
職人さんとの関係がまだしっかりできていないうちは、職人さんに現場のことを教えてもらうというスタンスで臨んだ方がお互いにとって良い工事になるでしょう。

まとめ

以上をまとめますと、

・工事の種類~戸建てやマンションを問わず、網戸の張替えから間取りの変更まで全ての工事に対応します。
・工務の仕事内容~工務の仕事は「工事をスムーズに進めるために必要なこと全て」
・工務のとある一日~最初はとにかく現場に顔を出しまくりましょう。最初は仕事の話しかしてこなかった職人さんがしょーもない話をし始めたら第一関門クリアです!
・工務になるには何をすればいいか?~資格が無くても工務にはなれます。ただし建築士等の資格を持っておけば転職や給料アップに有利です。

こんな感じですかね。

工務は建築会社の最強の裏方です。
工務がいなければ工事が着工すらできないうえに、
発注は誰がするの?デザインって決まってる?品質は誰がどう評価する?あの職人ってどんな人?ってゆうか予算って足りてるの?マンションの管理組合からクレーム来てるんだけど?納期遅れてるらしいけどどの職人さんに連絡したらいいの?ここの仕様の変更は誰に連絡したらいいの?そもそもこの商品取り付けられるの?あとはどんな工事が必要なの?etc..etc..etc……
みたいな状況に一瞬でなります。
この状況を一瞬で納められるのが工務なのです。

この記事が工務を目指す人にとって少しでも参考になれば嬉しいです。